大抵の場合、彼女はイオンのために泣く。
「イオンさまイオンさま」と連呼して泣く事から
それは明白なのだが、そんなことはどうでもいい。
僕はイオンアイツのことが大嫌いなので、
その場合何のフォローもせず放っておく。
基本泣かせるだけ泣かせて僕は何もしない。

だが、今回。
僕が原因で泣いている場合。
僕は…一体どうしたらいいんだ。


「うぇぇぇ〜ん!シンクの馬鹿〜!!」

「あー…あー、うん、そうかい……」


いやもう、本当どうしたものか。
彼女、アリエッタは僕の名前を連呼して泣き喚く。
泣く子と何とかには勝てないと言ったのは誰だったか。
まるで台風が来たようだ。本当、手が着けられないほどに。

「泣くなよ……」

きっかけは些細なこと。
楽しみにしていたお菓子を食べられたとか、
徒競走で頑張ったのに誰かに負けたとか、
そういう本当にくだらないこと。
くだらなさすぎて説明する気が起きない。
くだらなさすぎてかえって収拾がつかない。
こういう感情的なのは理屈じゃ終わらない。

「泣くなよ……悪かったよ、泣き止めよ……」
「うぇぇぇ〜ん!うぁぁぁ〜ん!!」

ぼやくような懇願、まるで効果なし。
どうする…マジでどうする。
僕が今まで泣く彼女をフォローしなかったのは
アイツが嫌いだからという理由だけじゃない。
こういう、理屈じゃない事態が苦手だからだ。
アイツが原因で彼女が泣いていたときは、
アイツのせいにして逃げていたわけなのだが。
僕が原因で泣いているこの場合、
やっぱり僕の責任になるんだろうな。
ここで逃げたら後で他の六神将の色々と言われそうだ。
そういうわけで今回の僕は逃げずにここで立ち往生している。

「泣くなよ……ていうかあんた僕の声聞こえてる?」
「うぁぁぁ〜ん!うわぁ〜ん!!」

全然聞いてないし聞こえてないし。
人の話はちゃんと聞けコノヤロー。
会話による交渉が無理か…うーん。
言葉リクツが通じない相手にはどうしたものか。

そういえばこの間本を読んだな。
アリエッタの泣き癖をどうにかしようと思って。
なんでどうにかしようと思ったことは置いといて。
その本のタイトルは思い出せないが、テーマは確か…


《育児書に書かれていた子育てテクニックその@》


…微妙に僕はアリエッタを誤解しているような気がするが
この際そんなことは無視する。全力で。
そういう誤解を生ませる奴の方が悪い。
で、そんなテーマな本のその内容はというと…


《動物の本能で子育てする。
 まずは子供を抱きしめてあげてください。
 言葉も大切ですが、抱きしめてあげることも大切です。
 言葉が言えなければ、そっと抱いてあげてもいいのです。》


―――何か騙されているような気もするが。
このまま現状維持していても意味がないし。
現状打破のためならば仕方がない。

そ、とアリエッタの背に手を回す。
そのまま胸に抱き寄せるとアリエッタは
きょとん、とでも言いたげに感じに泣き止んだ。

「……………………」
「シンク…?」

―――どうしよう。
何かこれすっごい恥ずかしいんだけど。
メチャクチャ死ぬほど恥ずかしいんだけど。
耳とかすごい真っ赤なっているのが分かるんだけど。
態勢からアリエッタに顔を見られないことだけが幸いか。
頬とか多分、林檎レベルにまで赤くなっているだろうから。

「泣くなよ……僕が悪かったから泣き止め。
 悪かった。ゴメンなさい。許してください…聞いてる?」
「……………………」

何で黙ってんだ。いや分かるけどさ。
そう黙り込まれると色々と意識してしまう。
密着しているから心臓の音が―――いや。
細身のくせして意外と柔らかい―――いやいや。
桃色の髪の毛からいい匂いが―――いやいやいや。
意識するな。意識するな、意識するな…!!
意識するなと命じれば命じるほどに意識してしまう。
あーもう!何で僕がこんな思いをしなくちゃならないんだ。

「泣くなよ……」
「はい…です…」

ようやく返事が聞こえた。
ホッとして彼女から離れる。
まだ心臓がバクバクいってる。
顔も…ああまだすごく熱いな。

アリエッタを見る。
泣きはらした目は赤く。
頬はそれ以上に真っ赤に。
…何でお前まで赤くなってんだ。

「あー…あー、えーと、その、さ……」
「あ…は、はい。な何ですかシンク…」

ガチガチに凝り固まったぎこちない会話。
何だこれ。何でこんなことになってんだ。
クソ…あの本、後で捨ててやる。

「……そろそろ昼食の時間だし、食堂に行こうか」
「は、あ、はい…です」

何だ、この間抜けな展開。
まあいい。この空気から逃げられるのなら。
さっさと昼食を終わらせて訓練所にでも行こう。
それでようやくこの空気から逃れられるはず―――

「…あの、シンク」
「何……」
「アリエッタが泣いたらまた抱きしめてくれますか?」
「ッ!!しない!!」




「テイルオブジアビス」より
シンクとアリエッタのカップリング

頭悪いなーと思います
誰がってこの私が
何この展開
何この桃色両想い

砂糖が五袋くらい口から出ますね
甘すぎですねチョロ甘ですね
色々とヤヴァイですねコレ

じゃ、そういうことで!(逃